前回公開した1月編に続き、今回の特集では2025年2月に投稿されたおすすめレビューの中から、特に「いいね!」が多くついたレビューをピックアップしました。
小説を読むとき、次に読む作品を探す手がかりのひとつとなるのが「おすすめレビュー」です。作品の魅力を深く伝えるレビューには、未読の人にとっては興味をもつきっかけになり、既読の人にとっては作品の面白さを再確認したり、新たな視点をもたらします。カクヨムには、そんな思わず「いいね!」を押したくなるレビューがたくさんあります。

今回の2025年2月編では、ラブコメ、ホラー2作品、現代ドラマの合計4作品に投稿されたおすすめレビューをご紹介します。前回に続き、今月も魅力的なレビューが集まっています。気になるレビューがあれば、ぜひ読んでみてください。新たな作品との出会いがあるかもしれません。

また、「このおすすめレビュー良かった!」と思ったら、ぜひ「いいね!」を押してみてください。レビューを書く人の励みになり、良質なレビューが増えるきっかけになります。そして、まだおすすめレビューを書いたことがない方は、作品を読んだ後にはぜひレビューを書いてみてください。あなたの感想が、誰かの「次に読むきっかけ」になるかもしれません。

ピックアップ

とてもしっとりとしたおススメ社会人ラブコメ‼

  • ★★★ Excellent!!!

この小説は、しっとりとした情感が心に染み入る、静かで深い再会の物語です。

初夏の夜、電車で偶然元恋人と再会する主人公の心情が、湿気を帯びた空気とともに丁寧に描かれています。

過去の甘く苦い記憶がフラッシュバックし、懐かしさと切なさが交錯する瞬間は、静かに胸を濡らし、読者にその場にいるかのような感覚を与え、しっとりとした余韻を残します。

二人が居酒屋やホテルで過ごす時間は、刹那的でありながらどこか温かく、過去と現在の微妙な距離感が繊細。別れと再会を繰り返しながらも、関係に名前をつけず曖昧なまま進む二人の選択は、深い寂しさを含んでいるように思えますね。

出張先での偶然の再会や、ミモザのグラスを傾けるシーン、駅での別れ際のキスなど、どの場面も大人で湿っぽい雰囲気が漂い、二人の間に流れる未練と愛おしさが読者の心にじんわりと広がります。

この作品は、再会の美しさと儚さを湿った空気感とともに描き出し、読後に静かな感動とほろ苦い余韻を残す傑作。おすすめです!

美しく、恐ろしく、妖しい

  • ★★★ Excellent!!!

本作で特徴的だと感じたのは、表現方法。特に血の表現が美しく、生々しく、恐ろしい。妖艶と言ってもいいかもしれない。ストーリー構成もさることながら、この細かい表現が作品の怪しげな雰囲気を何倍にも増長させていると感じる。キレイなのに不気味。その相反するような二つの感情を両立させるような表現に作者様の技量の高さを感じる。

血に染まった歴史、血に塗れる人々。美しく、恐ろしく、妖しい世界をぜひ体感してみてください。

細やかで丁寧な情景描写と心情描写。まるで映像を追っているような没入感。

  • ★★★ Excellent!!!

異世界へ旅立った息子のご両親のその後、という興味深い設定の作品です。
異世界の存在を何も知らぬまま、息子の失踪を受け入れねばならない両親の苦悩。読み進めるうちに、読み手はファンタジー的な気軽さからいつしか遠く離れた場所に佇んでいることに気づきます。息子を突然失った親の動揺、不安、悲しみ。息子は生きているのか、もうこの世にいないのか。その原因は……彼らの苦悩の一つ一つが、ひしひしと胸に迫ります。
情景と心情の描写が大変丁寧で細やかです。文字を読んでいるはずが、いつしか映像を追うような没入感でページをめくってしまいます。

この世界の人間を異世界へ召喚する女神は、その家族へ言葉を尽くしたメッセージを残すべきである。読後にそんな思いを噛み締めずにいられない、味わい深い短編です。

恐怖は、音もなくやって来る

  • ★★★ Excellent!!!

ホラーは未知であるが故に怖いのだと個人的には思っているので、内容については一切触れずに本作の内包する"恐怖"という名の魅力について語りたい。

1999年に超低予算で制作された異色作「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の大ヒット以降、ホラーというジャンル界隈に於いてはモキュメンタリーが幅を利かせている。代表的なもので言えば「パラノーマル・アクティビティ」だろうか。

本作はそういった意味では流行に逆行しているのかもしれないが、だからこそモキュメンタリーに食傷気味な方、古のおどろおどろしい和風ホラーを求めている方には刺さると思う。

物語の鍵となるのは、水──心霊マニアならばピンと来るだろう。古来より霊は水場に姿を現すと伝えられているからだ。即ち水は、此岸と彼岸とを繋ぐ門のようなもの。

我々が日常的に恩恵を受けている水……それが深く昏い闇の奥底にて邪悪を孕み、やがて不定形の恐怖として地表へと這い出し、そして何もかもを忘れ去った愚かな者たちへとその牙を剥くのである。

未知だからこそ怖い。理不尽だからこそ恐ろしい。恐怖とは──ホラーとは、本来そうあるべきもの。未知なる恐怖というものを、本作は高い完成度で表現している逸品である。

水という名の不定形の恐怖……果たして、惨劇を止めることは出来るのか。