異世界ファンタジーでチート級の魔法やスキルを使って無双するストーリーに憧れませんか? でも、現実ではそんなチートな能力は存在しないと思ってますよね。そんなことはありません、現代社会においては学校で学ぶ科学や知識こそが最強のチートです。いえ、たとえ剣と魔法のファンタジー世界でも、知識というものは間違いなくチートです。教科書に載っている知識は、人類が数千年にわたって築き上げた歴史と、数十億人分の努力の集大成ですから。生まれや出自に関係なく、本人の才能の有無にもかかわらず、誰もが活用できる万能のチート、それが知識です。今回は、現代知識を駆使して異世界で大活躍する作品を取り上げてみました。これは、あなたもできる物語です。あなたも主人公になれる物語です。今月、進学した方や新学期を迎えた学生さんも多いことでしょう。なぜ、学校に通うのか? なぜ、勉強が必要なのか? 現実でも知識を活用すれば、こんなことも、あんなこともできる。いろいろな夢が実現できるのです。これをきっかけに、知識の大切さ、面白さに少しでも気づいていただければ幸いです。

ピックアップ

魔法を科学で解き明かせ! 科学オタクの勇者、異世界に革命を起こす

  • ★★★ Excellent!!!

 人類を脅かす魔王軍に対抗するため、異世界アルセイア王国が「勇者」として召喚した九条迅は、科学者を志す現代の高校生だった。魔法に強い興味を抱いた彼は、科学的に魔法を研究し、異世界に革命を起こしていくことに……。

 この作品の魅力は、異世界の魔法を科学的に検証していくアプローチにあります。

 これまでの異世界の常識では、「魔法とは神が与えた奇跡」として受け入れられて、誰一人その仕組みや原理に疑問を抱こうとはしなかった。

 そんな世界で「魔法の呪文とは何か?」、「魔力はどこから生まれるのか?」、「威力を高める方法は?」と、次々に問いを投げかけていく九条迅の型破りな思考がユニークです。

 ひとつひとつ仮説を立て、実験し、検証を重ねながら、神秘のヴェールに隠されていた魔法の法則を明らかにしていく、その過程が理科の実験のようで知的好奇心をくすぐられるんです。

 最初は迅の研究を「余所者の戯れ」として懐疑的に見ていた魔法士たちですが、熟練の宮廷魔法士ロドリゲスや、天才美少女魔法士リディアといった実力者たちが賛同し始めて、やがて王宮中の魔法士が団結して魔法の発展に取り組むようになっていく光景に胸が熱くなります。

 しかし、そんな迅の研究は魔王軍を刺激し、ついに侵攻が始まる。果たして、進化した魔法は人類の希望となるのか? 魔法を科学する、異色のサイエンス・ファンタジーです。


(「異世界で科学無双」4選/文=愛咲優詩)

身分の壁をぶち壊せ! 孤児の少年、皇帝への道を駆け上がる

  • ★★★ Excellent!!!

 異世界の孤児の少年・ルネとして転生した主人公が、現代科学の知識を武器に皇帝へと成り上がっていく異世界転生ファンタジーです。

 ルネが転生したヴェスタリス王国は身分の差が非常に激しく、貴族と庶民では住む世界がまるで違う。ましてや孤児の子どもなど人間扱いすらしてもらえない。

 そんな中、魔法を使え、現代知識を持つルネは、自ら銃や火薬を作り出し、冒険者として頭角を現していきます。しかし、年齢や身分で魔物を退治しても信じてもらえなかったり、魔物に襲われていた貴族を助けたにもかかわらず、感謝どころか足蹴にされたりと、理不尽な仕打ちを受け続けます。そんな境遇にも屈せず、実力で周囲を見返していく展開が痛快なんですよ。

 ルネの活躍が、はからずも王国に渦巻く陰謀を打ち砕き、国王陛下やラファエラ王女の信頼を勝ち取っていく。追い詰められた敵勢力による叛乱が勃発し、戦争でも圧倒的な力を見せつけたルネは、王国の英雄に、ついには帝国の皇帝へと昇りつめていきます。騒動が騒動を呼び、目まぐるしく展開していくストーリーが軽快でいいんです。

 例え孤児であっても、知識と努力さえあれば出世できる。一方で、どれだけ恵まれた立場にあっても、自らの本分を怠ればすぐに転落する。そんな学問の大切さを教えてくれる物語です。


(「異世界で科学無双」4選/文=愛咲優詩)

底辺からの研究生活。冷遇王子、頭脳で成り上がる

  • ★★★ Excellent!!!

 大学で研究者として勤務していた主人公は、女性であるという理由だけで冷遇される日々を送っていた。そんな彼女が、異世界で王族の第10王子・アダムとして転生を果たす。女神から「平等な社会を築いてほしい」と託され、異世界でも研究者としての道を歩むことを決意する。

 エルフや吸血鬼、悪魔といった異種族が共存するファンタジー世界でありながら、パソコンや自動車といった現代的な技術も存在している世界観が独特です。

 女神のはからいで王族として生まれたアダムですが、第10王子という地位では権力や財力は自由に使えない。さらに問題を抱える両親によって辺境へと追いやられてしまう。またしても冷遇を受けながらも、研究者を目指すアダムの姿が健気で心を打つんですよ。

 この世界において『研究者』とは、個人が勝手に危険な実験や違法な研究を行えないように、最難関の国家資格になっている。論文が認められなければ名乗ることすら許されない。10歳のアダムは研究者となるためにフィールドワークを始め、周囲の協力を得ながら見事、史上最年少で資格を取得する。

 それだけでも十分に立派ですが、ここからが始まり。自らの研究所を持つためには、他の王子や王女たちと競い合い、王位継承順位を上げていく『王位戦』に挑まなければならない。知恵を武器に立ち回るアダムの姿が、本作の見どころ。逆境に屈せず、知性と努力で未来を切り拓くアダムの挑戦に胸が高鳴ります。


(「異世界で科学無双」4選/文=愛咲優詩)

シナリオには縛られない! 乙女ゲームのヒロイン、自由に生きる

  • ★★★ Excellent!!!

 とある女子大学生が、気がつくと乙女ゲームの世界のヒロイン・カナとして転生していた。ゲームに縛られない自由な人生を求めたカナは、原作には登場しない魔術学院へと入学する。現代の科学知識と持ち前の頭脳を武器に、彼女は新たな人生を切り拓いていく。

 いわゆる「乙女ゲーム転生」ものでありながら、既存のシナリオや登場人物にとらわれない、完全なる独自ルートを歩もうとする展開が新鮮です。

 ゲーム本編では描かれていない魔術学院でカナが出会うのは、当然ながら初めて知り合う人々。明るくて優等生のジーク、美少女で人気者のマリー、体育会系で男気のあるアランなど、気の合う級友たちと勉学に励み、部活動に打ち込み、ときに恋愛を楽しむ。自分の望むままに過ごす学園生活は、まさに青春そのものです。

 通常の授業に加え、魔法の授業もあり、カナは持ち前の科学知識を応用して好成績収める。学校行事の魔術対抗戦では、独自の魔法を駆使して戦い抜き、魔術士として成長していく姿も見どころのひとつです。

 シナリオに縛られない自由な日々を謳歌していたカナですが、あるときジークがゲーム内で死亡する「名もなきモブキャラ」だったことに気づく。彼の死の運命を回避するため、カナは運命に立ち向かう決意を固める。果たして彼女は、大切な友人を守り抜くことができるのか? 乙女ゲームの枠を超えた青春学園物です。


(「異世界で科学無双」4選/文=愛咲優詩)