大雪が降ったりなんだりかんだりありました(雪以外思いつけませんでした)2月も本日で終了ですよ! 早い! 早すぎる! いつもより2、3日少ないだけでいろいろやらないといけないことのリミットが早まってダメージが深刻です! まあ2月が2、3日増えたところでダメージは減らないんですけどねぇ。体感で60日くらい欲しいところです。
 今月は現代ドラマにジャンルを絞り込み、いろいろな恋愛の形を追求してみました。多様性が根づいた現代社会が舞台だからこそ、恋愛というテーマをどう表現するかも千差万別となります。そして読ませていただいて感じたのは、まさに「全部違って全部いい」がここにある! ということです。いつも心情心情とわめいているわたくしですが、キャラクターばかりでなく、文章から染み出す作者さんの心情も堪能させていただきましたよ。
 御託はこのくらいにしまして、どうぞご賞味をばー。

ピックアップ

浮気された青年は彼女と間男へシフト制恋愛を提案する。

  • ★★★ Excellent!!!

 恋人の安奈から浮気相手である陽斗(はると)を紹介され、伊月(いつき)は喜んだ。なぜなら彼にとっての喜びは、安奈が楽しく生きてくれていることだから。もちろん安奈にも陽斗にも理解されず、話は拗れかけるのだが……「シフト制にしないか?」。伊月のひと言から、彼と陽斗が交互に安奈の恋人となるお試し期間がスタートするのだった。

 伊月さんの思考、実に今時なリアリティを感じるわけですけれども、目を惹き込まれたのは安奈さんを挟んだ月=伊月さんと太陽=陽斗さんの関係性です。

 月と太陽、これがまさにキーワードとなって物語に仕掛けられた謎を解き明かし、果たして読者へただの拗れた恋愛物などではありえない真実を見せつける。これはまさに構成力の妙!

 読後感はおそらく人それぞれかと思います。が、エンディングであらためて浮き彫られる伊月さんという人の有り様は、人を選ばずその胸を強く打ち据えるのです。

 9000字に満たない文字数とは思えない、濃密で酷薄で優しい恋愛ドラマです。


(「現代ドラマ×恋愛=多彩!」4選/文=高橋剛)

先輩なのに妹!? 男の娘とポンコツ姫の不思議な関係とは?

  • ★★★ Excellent!!!

 姫川玲奈はそのかわいらしさと能力の低さから、社内では“ポンコツ姫”と名高い新人である。武田正隆は彼女の指導係として日々悪戦苦闘していたのだが……趣味の女装をしている最中に玲奈と出合ってしまい、咄嗟に自分は正隆の妹、菜々美だと嘘をついてしまって。けして正体を知られてはいけない友達付き合いがここから始まる!

 正隆さんは男の娘で、もちろん社会的に隠しています。なのにダメな後輩に見つかってしまってさあ大変! なわけですが。立場が変われば、同じ人でも違う側面が見えてくるものです。女装と運命的な出逢いを果たした正隆さんの心情もそうなのですが、本当にキャラクターの人物像を端的且つ濃やかに描き出す、キャラクター描写力がすばらしい! だからこそ蕾ほころぶように表されゆく玲奈さんの魅力に惹き込まれますし、巻き込まれてしまう。彼女に振り回される正隆さんに感情移入するのは当然というものですねぇ。

 みんな違ってみんないい。そんな恋愛が楽しみたい方へおすすめです。


(「現代ドラマ×恋愛=多彩!」4選/文=高橋剛)

一夜限りの逃避行がふたりにもたらしたものとは?

  • ★★★ Excellent!!!

 中学2年生の如月 誉(きさらぎ ほまれ)は塾からの帰り道、唐突に降ってきた隣のクラスの女子――それもセーラー服にピンヒールを履き、何者かに追われているらしい風早汐璃(かぜはや しおり)と出遭う。「あたしと、逃げてくれる?」、なんの説明もなしに投げられたその言葉へ彼は乗り、ふたりきりの逃避行へと踏み出したのだ。

 謎ありな女の子が降ってくるのはボーイミーツガールの王道ど真ん中ですが、女子中学生とは相容れないピンヒールを“謎”にしたキャッチーさ、目を奪われました!

 でも、奪われた目はすぐに深々と引きずり込まれるのですよ。夜の街をいっしょに逃げる中、それこそ相容れないはずのふたりを苛む背景が見えて、実は同じような葛藤を抱えていることが知れて、子供だからこそベストならぬベターな先を選ぶしかないふたりの現実と向き合わされて……でも夜はかならず明けるんだという希望が見えもして。ほろっと思うのですよ。これはつまり青春だなって。

 青々しく清々しい一夜物語、ぜひご一読あれ。


(「現代ドラマ×恋愛=多彩!」4選/文=高橋剛)

心を救う仕事、彼女の言葉が代筆屋を蘇らせた。

  • ★★★ Excellent!!!

 フリーライターの氷藤貴之が始めた副業は、インタビュアーとして鍛えた能力と書き文字の美しさを生かしての「代筆屋」だった。が、人から本音を引き出し、真心を込めた手紙を書くのは想像以上に難しい。なので仕事と割り切って効率化し、手早く終わらせていこうと考えていたのだが……怒鳴り込んできた新田美優との出逢いが彼を変える。

 ビジネスライクな貴之さんの言い分、社会人ならわかってしまうのです。だからこそ美優さんの情の厚さがちょっと辛くも感じるのですが。彼女のまっすぐな気持ちが貴之さんに思い出させます。仕事と真剣に向き合うプロ魂を。

 本作の魅力はなんといっても心情描写の濃やかさです。貴之さんと美優さんの心情、そこへ依頼人の心情が注ぎ込まれて、読者の心をほろっとぬくもらせるあたたかな彩りを描き出すのですよ。

 さらにひとつのお話が終わった後のエピローグ部分、これがまた味わい深い。この鮮やかな余韻もどうぞお楽しみください。そうそう、貴之さんと美優さんの恋の行方も!


(「現代ドラマ×恋愛=多彩!」4選/文=高橋剛)