概要
そこに1デナリウス銀貨を投げ入れると、どんな願いも叶うと言われている。
踊り子の娘が泉に祈りを捧げた願いは、足を治して踊り続けること。
しかし泉に住む二人の精霊――「正」の願いを叶える天使と、「負」の願いを引き受ける悪霊の間で、少女の運命は揺れ動く。
願いを叶えるとは何か、そしてその代償とは?
帝都の闇と人々の欲望を映し出す短編ストーリー。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あなたの願いは、なんですか?
あるところに ふしぎないけがありました
そこは ぎんかを一まいなげいれてねがいごとをすると どんなねがいごともかなうという ふしぎないいつたえがあるいけでした
あるひ ひとりのむすめがぎんかをなげいれて ひとつのおねがいをしました
ところで いけのそこにはてんしとあくりょうがすんでいました
ぎんかにこめられたねがいをかなえていたのは じつはかれらだったのです
そんな、童話で書かれていてもおかしくないような短編ファンタジーです。
天使と悪霊。
彼らはどうやって願いを叶えるのでしょう。
そして少女の願いは叶ったのか?
短編ながら奥が深い作品です。
ご一読ください。 - ★★★ Excellent!!!そ の 願 い を か な え る も の は 誰 か ?
貨幣を落とすと、願いをかなえてくれる泉。
そこには正に向かう願いをかなえる天使と負へ向かう願いをかなえる悪霊がいました。
しかしこの存在たちの名前と性格は合致したものではないのです。
天使は自身の感情を挟まずに効率的に願いをかなえます。請われたら施す機械のようです。
一方の悪霊は、自身の感情を持て余しつつ気まぐれに冷笑をもって願いをかなえます。
そして天使の役割に不穏な感情を抱えてもいます。
〝願いなどは、所詮は欲望だ〟
そんな悪霊の言葉が心に響きました。
願いをかなえる泉に少女が1デナリウス銀貨を落とすところから、この物語は始まりました。
そしてこの先、天使と悪霊と少女はそれぞれ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!絶対おススメ!童話としてやさしく書き換えて欲しい物語
子ども向けに易しい言葉で書き換えて、児童文学として出して欲しい、そんなお話でした。
願いが込められ泉に投げられたコイン、天使は正のお願いを、悪魔は負のお願いを叶える。
天使は正しいことをしていると信じているが、悪魔は疑問を感じている。二人の考え方が本来の天使と悪魔に我々が抱いているイメージとは異なるのだが、分かり易く描写されていて、すんなりと心に落ちてなるほどと考えさせられた。
お願いに来た少女の結末がとても良く考えられていて、その後の天使と悪魔の行く末も粋な終わり方で、読んで良かったと思えました。
自信を持っておススメできる秀作です! - ★★★ Excellent!!!美しい童話の様な物語
表現が非常に美しく、童話の様な形で綺麗な挿絵でもあったら、きっと多くのファンがつくと思います。
悪霊と天使の役割の違いから生まれた、幸せに対するスタンスの違いが、読み手にも無理なく納得が出来る構成が素晴らしいです。
そして悪霊と少女の選んだ道は意外性がありました。
しかし、読者の期待を裏切るものではなく、期待を超えたものでした。
出会いが人を変えていくストーリーは非常に私好みです。
情景描写は頭ひとつ抜けて高いレベルにあります。
まとまりが良く、読了感爽やかで、文字数自体は多くないのですぐに読み切ることができます。
心が温まるお話をお求めの方に是非とも読んでいただきたいです。
自信を持…続きを読む - ★★★ Excellent!!!シンプルながら、心に残る小編
心が洗われるようなお話でした。
異世界ファンタジーではありますが、どちらかというと童話、寓話の世界に近いかも知れません。
人の欲望を叶えてあげることが、本当に人の幸せにつながるのか。自分の力で手に入れていない成功は本物なのか。そして、願いをかなえるたびにエスカレートする、欲望、嫉妬。
その中で、最初はヒネた悪役だった悪霊の真心が、自分を信じて疑わない天使の心を少しずつ変えていきます。
最後の、天使の、「おれたちが願いを叶えたからではなく、人は、自分で気づくものなのだ」という言葉に、本作のテーマが全て込められています。
お昼のお盆を脇にどけてキーボードを出して書いてしまいました…続きを読む