悪夢の静謐

本作は小説家・飯田太朗シリーズの一作ですが、この作品から入っても全く問題ありません。
論理派ミステリの多い同シリーズにおいては、サイコスリラーの色味の強い、異色の作品と言えるでしょう。

舞台となるのは『静謐の教団』というカルト教団。
飯田先生は、かつて同じ夢を目指した親友・阪村を追って、教団に潜入します。

まず、この教団内での描写が凄まじい。
一服盛られた飯田先生の見る幻覚がとにかくグロいです。精神を直接的に害されるような最悪の気分になります。とても褒めてます。
恐ろしいのは、幻覚と現実の境目が曖昧なこと。明らかに非現実的な現象なのに、いつからその領域に踏み入れたか分からないのです。
グ…続きを読む

まず初めに警告。
本作には非常に強い嫌悪感を及ぼす描写が多数見られます。
ゴア表現、ハードなエログロ、倫理観のない重篤な人権侵害などへの耐性がない方は、本作品を読むことを避けられた方が良いでしょう。

ここまで醜悪極まり、嫌悪感を逆なでさせるおぞましい作品も中々ありません。
そして、新興宗教がこれらの常軌を逸した狂気の世界の隠れ蓑に使われているというのも、実に真に迫る胡散臭さを感じさせます。
細かな小道具を子細に描き上げリアルを追求し作品の解像度を高める技法、不安や焦り、恐怖を掻き立てる不快なほど子細な情景と心理の描写、現実感が薄れ何が本当の事なのかわからなくなる不確かさへの疑念など、脳にど…続きを読む

怪しい宗教団体の立ち上げに関わったらしい元相方を救って欲しいと言って来た女性は、その元相方の元カノ。女性の頼みを引き受けて、教団に乗り込む主人公の飯田。

とにかく心理描写、情景描写に使われる言葉と文が秀逸すぎる。私にはとても真似できない。

はぁ〜と巧みな文体に感心しながら読み進めると、ストーリーにも引き込まれて、えっもう終わり？早く次を読みたい！と思ってしまった。

まだ三話までしか更新されていないが、この先が楽しみで堪らないので、このワクワク感を多くの方と分かち合いたくてここでレビューを書いてしまった。

是非今のうちに読み初めて、この先の展開を一緒に期待しましょう！

スマートな文体で、密度はあるけど読みやすいです。やばい事件に接しているという臨場感が伝わってきました。今後の展開も楽しみです。