昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。~『竜殺の鬼神』と呼ばれた日~
楽山
第1部:『竜殺の鬼神』と呼ばれた日
1.【未解決】西府中市首無し女子高生事件
【未解決】美少女たちは生きたまま首を切られたのか『西府中市首無し女子高生事件』
ちょこっと未解決チャンネル 西暦二〇二四年十二月三日投稿
「突然だが、姉者は、西府中市を震撼させた平成最恐の未解決事件を知ってるか?」
「何よ妹者、藪から棒に。西府中市といえばタルタル焼きそばが有名だし、タルタル焼きそばを凶器にしたタルタル焼きそば殺人事件じゃないかしら」
「そんなことあるわけないぜ。今から八年前、都心のベッドタウンである西府中市で、女子高生の首無し死体が二体発見されたんだぜ」
「首無し死体が二つ!? 一つでもドン引きなのに、二つだなんてドンドン引きよ!」
「しかも殺された女子高生二人は、街でも有名な美少女でな、三日間も性的暴行されたあとに生きたまま首を切られたと見られていて、その残虐性から平成最恐の殺人事件と名高いんだ」
「タルタル焼きそばしか名物がない西府中市で平成最恐の殺人なんて、踏んだり蹴ったりもいいところだわ」
「それじゃあ今回は、平成最恐の未解決殺人事件、西府中市首無し女子高生事件をちょこっと解説していくぜ」
「ちょこっと見ていってね!」
♪
「最恐の殺人事件の被害者になる女子高生は、野間美優季さんと青木碧さん。西府中市第一高校に通う高校二年生だぜ」
「ブレザーが可愛い高校ね」
「二人は同じクラスのクラスメイトで、それぞれ単独のファンクラブ、二人の仲良しを見守る会と、ファンクラブが三つもあるような美少女だったんだ。二人の友人がSNSにあげた写真を見てくれ」
「めちゃくちゃ美人じゃない!? ロングヘアとショートカットの美少女二人なんて、これはアニメじゃないのよ!?」
「ほぼ無加工に見えるこの写真でこのレベルは凄いよな。ファンクラブがつくられるのも納得だ」
「私は髪が長いのが好みだから野間さん派ね」
「あたしは短い方が好きだから青木さんだぜ」
「二人は部活動をやっていたのかしら?」
「青木さんはバスケットボール部だったみたいだが、ほとんど幽霊部員で、放課後は繁華街で遊んだりが多かったようだ」
「不良だったのね」
「いや、素行がいいわけではなかったが、警察に補導されることはなかったという話だ。二人とも成績は優秀で、単に学外の友達も多いから、繁華街に行ってたみたいだな」
「陽キャの極みみたいな二人ね」
「学内の漫画研究会で遊ぶことも多かったという情報もあるぞ」
「オタクに優しいギャルってこと? 実在したのね!」
「同級生は幸せ者だよな、こんな子が学校にいたら、毎日ウキウキルンルンだぜ」
「でも、二人には、これから悲しい運命が待ってるのよね」
「そうだぜ、美人薄命で片付けるには酷すぎる大事件が起きてしまうんだぜ」
♪
「事件が起きたと見られるのは、二〇一六年八月二十九日から八月三十一日にかけての三日間」
「夏休みの終わりじゃない」
「最高の夏休みが最悪の人生の終わりに変わってしまうんだから、運命ってわからないよな」
「八月二十九日に二人に何があったの? 詳しく教えてちょうだい」
「残念だが、八月二十九日に何があったかは、実はよくわかっていないんだ」
「なによそれ。警察もっとがんばりなさいよ」
「その日は当然休みだったんだが、二人は以前から周囲の友人に『二十九日は応援に行く』と言っていたそうなんだ」
「応援? 誰の?」
「それもわかっていないんだぜ。ただ、八月二十九日の午後三時近く、その日の最高気温は三十五度を超えていたが、クラスメイトの男子が川沿いの道で制服を着た二人とすれ違っている」
「目撃者がいたのね」
「週刊誌の情報だから定かではないものの、どうやら二人は、普段遊んでいた繁華街とは反対にある旧市街に歩いて向かっていたらしい」
「怪しいわね。旧市街には何があるの?」
「めぼしい施設は西府中市美術館や西府中市大橋支所といった公共機関ぐらいだな。バブル期には市最大の歓楽街が栄えていたんだが、新西府中駅が今の場所にできたことで一気にさびれてな。今は空きテナントや廃ビルも目立つ古い地域なんだぜ。ちなみに、二人が通う西府中市第一高校も旧市街の外れにあるんだ」
「じゃあ学校に向かっていたんじゃないの? 夏休みでも部活はあるでしょ」
「それが、その日は昼からの部活や補習はなかったんだ。二人が学校に行く理由がないんだぜ」
「学校には行っていなかったのね」
「ああ。二十九日も学校には何人かの先生がいたんだが、誰も二人を見ていないんだ。その日に学校に行かなかったのは間違いないだろうな」
「どこに行ったのかしら? 監視カメラで追えないの?」
「旧市街は古い地域だから監視カメラも少なかったんだ。クラスメイトの目撃証言以降、二人の足取りは途絶えるんだぜ」
「行方不明ってことね。親御さんは心配したでしょうね」
「そして、夏休みが終わった九月一日の朝。西府中市第一高校の職員用トイレで、二人は首無し死体で発見されるんだ」
「ええええええ!? 何がどうなってそんなことになるのよ!?」
「だからそれがわかっていないんだぜ。二人の行方不明届は八月三十日に両家族から出されていて、警察の懸命な捜索が続く中、最悪の結末になってしまったんだ」
「二人は首を切られて殺されたの?」
「ああ。警察発表によれば、頸動脈への一撃が致命傷になったとのことだ。ただ、二人とも首の切断面がズタズタになっていてな、切れ味のよくない刃物で時間をかけて首を落とされたと見られているぜ」
「ひえええええ〜、いったい誰がそんなむごいことを……」
「しかもな、二人とも下着を身に付けていなかったんだ」
「首を切られた上にノーパン!?」
「そうだぜ。遺体の着衣には乱れがあったうえ、二人の体内から複数のDNAが検出されたんだ。なんと死の直前まで複数人に性的暴行を受けていた可能性もあるらしいぜ」
「そ、そんな……」
「死亡推定時刻は八月三十一日の夜十一時頃。職員用トイレ内の血の量が少なかったことから、どこか別の場所で殺されて、発見現場に運び込まれたと見られているんだ。そして、残念ながら頭部は見つかっていない」
「……………………」
「姉者?」
「……許さないわ……」
「許さない?」
「決めたわよ妹者」
「なんだぜ姉者」
「私、野間さんと青木さんの仇を取る。犯人たちを捕まえてぶっ飛ばしてやるわ。今すぐ犯人を教えなさい」
「無理だぜ。これは未解決事件なんだぜ。ショッキングな遺体に反して遺留品や手がかりは乏しく、遺体には多数の指紋が付着していたものの、いまだ犯人の特定には至っていないんだ」
「付近で不審者が目撃されたとか、犯人の目星は付いていないの?」
「不審者か。それじゃあ次は 事件にまつわる噂話についてちょこっと解説しよう」
「噂じゃあ意味ないのよ! ぶっ飛ばしに行けないじゃない!」
♪
「一つ目の噂は、二人は殺人兄弟に殺されたというものだ」
「殺人兄弟!? そんな物騒な奴らがいるの!?」
「殺人兄弟は西府中市に伝わる都市伝説の殺人鬼だ。一九九三年十月から翌三月に発生した西府中市連続児童失踪事件にも、この殺人兄弟が関わっていると言われているんだぜ」
「そうなのね。いったいどんな奴らなの?」
「殺人兄弟は常に兄弟で徘徊している大男の二人組でな、ボロボロのポロシャツの下に大鉈を隠し持っているとされている。夕方の小学校に現れて、子供に将来の夢を聞いてくるんだ。その時、男子でも女子でも、『あなたたちのお嫁さんになる』と言わないと殺されるらしい」
「ええええ……キモぉ……」
「二つ目の噂は、西府中市を根城にしていた不良グループ、ゴルゴダと
「あら、今度のはずいぶん現実的ね」
「このゴルゴダと須弥山ってのは超武闘派の不良グループでな、西府中市の覇権を取るって名目で幾度となく決闘騒ぎを起こしているんだぜ」
「ふぅん。でも、どうして仲の悪い不良グループが首なし殺人事件に関わってくるの?」
「それが確かな関連性は判明していないんだが、野間さんと青木さんが殺された二週間後、須弥山の幹部だった犬浦大輝が遺体で発見されているんだ」
「また人が死んだのね」
「しかも、河川敷で発見された犬浦の遺体は、死後二週間程度経過していたんだぜ」
「二週間!? 野間さん、青木さんが殺された時と近いじゃない!?」
「ああ。だから野間さんと青木さんはこの二つの不良グループと繋がりがあって、どちらかのメンバーに殺されたんじゃないかって推察されているんだ。しかし警察は、女子高生と不良グループとの関わりを何一つ公表していないんだぜ」
「タイミング良すぎだし、関係ないってことはないと思うけど……」
「三つ目の噂は、人身売買組織に拉致されたというものだぜ」
「超絶に最悪ね」
「野間さんと青木さんはファンクラブが複数あるほどの美少女だったからな。VIP相手の性接待や裏ビデオ撮影のために、国家的な裏組織が動いていたんじゃないかという話があるんだ」
「国家的裏組織? ここは日本よ? いくら美少女だからってそんなことある?」
「というのも、ワイドショーであれだけ騒がれたのに捜査が進展しない理由が、警察上層部になんらかの圧力がかかっているからだと言うんだ」
「上級国民に弩級の変態がいて、そいつらが警察を牛耳ってるってこと? あり得ない話じゃないけれど……」
「野間さんと青木さんの陵辱から殺害までを映したスナッフビデオを見たと言う声も、匿名掲示板にはあるんだぜ」
「ビデオの現物は流出しているの?」
「流出はしてないんだぜ。だからこの説も、単なる噂話に留まっているって感じだな」
「殺人鬼、不良グループ、裏組織……なんと言うか、都市伝説のよりどりみどりね」
「あとは口裂け女が二人の美貌に嫉妬して殺したという説もあるが、さすがにこれは眉唾だろうぜ」
「なんでいきなり口裂け女なのよ?」
「西府中市は口裂け女が暴れた場所として有名なんだぜ。昭和五十四年から五十五年にかけて、口裂け女の目撃通報が頻発して、当時の西府中市長が『口裂け女はただの噂であり存在しない』という市長声明まで出す事態になったんだ」
「西府中市って結構むちゃくちゃな街だったのね。タルタル焼きそばぐらいしか名物がないくせに」
「野間さんと青木さんという美少女が新しい名物なんだぜ」
「悲劇の、ね」
♪
「さて、西府中市首無し女子高生事件をちょこっと解説してきたがどうだった?」
「最悪オブ最悪だったわ。いつか犯人が捕まる日は来るのかしら?」
「どうだろうな。いまだ世間の関心は高いものの、新しい証拠や証言が出てこない限り、今後の動きはないかもだぜ」
「大人になった野間さんと青木さんに会ってみたかったわね」
「きっと、もっと綺麗な人になっていただろうぜ」
「ぐわ~~~、ほんともったいない! 犯人は地獄に落ちるがいいわ!」
「それじゃあ本日の未解決事件解説はここまでだ。次回も、謎とときめきに満ちあふれた未解決事件を皆様にお届けするぜ!」
「『西府中市、闇深すぎだろ』って思った人は高評価とチャンネル登録していってね!」
「「ご視聴ありがとうございました!!」」
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