戦国日本を世界一豊かな国へ!
わびさびわさび
エピローグ
西暦20××年 5月 新潟県上越市
ドドッド---ン
耳を引き裂くような破裂音が響き、少し遅れて地面が震えた。廃墟の壁と床を通してその振動が体中に伝わってくる。
また近くで砲弾が炸裂したようだ…。
「…あいつら、ちゃんと撤退できたのか…」
少し前に泣きながら撤退していった部下たちの姿が目に浮かぶ。先日の戦闘で、俺は右足に重傷を負った。
「命に別状はないが、もうまともに歩けない」と軍医が断言するほどの重傷だ。
それでは撤退にも支障をきたし、俺の兵士としての寿命もここで終わることになる。俺は部隊の中でも古株で、年齢も上から数えた方が早い。
何より、もう死んでも悲しむ家族もいない。
俺は戦場に残り、味方の撤退を支援する任務に志願した。
どうやら、今回の衝突は俺たちの負けらしい。この戦いでも多くの日本人が死んだ。しかし、とても救いとは言えないが、それ以上に敵の犠牲者も多かった。
日本と隣国との間で繰り広げられているこの不毛な消耗戦は、すでに5年以上も続いている。いつ終わるのか、誰にもわからない。しかし、今すぐに終戦になる気配はない。
第三次世界大戦は、突然始まった。平和ボケしていた日本に、宣戦布告とともに大量のミサイルが降り注いだ。
布告から10日で沖縄が陥落し、半年後には九州、さらに一年目には近畿まで占領された。しかし、その頃には同盟国の支援もあり、こちらもようやく反抗の兆しを見せ始めた。
そこから今日まで、泥沼の消耗戦が続いている。日本人の死傷者は、すでに太平洋戦争を軽く超えている。
この戦争を通じて、日本人は平和の儚さと脆さを痛感した。どれだけ平和や友好を唱えようと、相手がそれを望まなければ、意味のない言葉に過ぎないと。
俺もまた、何も判っていなかった、平和ボケした日本人の一人だった。
恐らく、俺はここで死ぬだろう。恐怖は不思議と感じないが、昔の記憶がやたらと脳裏に浮かぶ。
俺の名前は佐伯遼佑。中部地方の海なし県出身で、高校、大学では理系を学び、大手商社で研究職をしていた。仕事は新素材の研究開発で、その運用方法の確立を目指していた。
仕事も家庭も順風満帆だった。妻の美沙と娘の奈美と共に、長期休暇には国内外を旅し、幸せな日々を送っていた。
この戦争が始まるまでは…。
あの日、日本が初めてミサイル攻撃を受けた日、俺は休日に家族と昼食を食べていた。突然、自宅にミサイルが直撃し、助かったのは俺だけだった。
気がつけば、病院のベッドで包帯にまみれ、妻と娘を失ったことを知り、呆然とした。
その後、俺は軍に志願し、戦場へ赴いた。敵への憎しみと、早く妻や娘のもとへ行きたいという願いが俺を駆り立てた。
俺は胸ポケットから一枚の擦り切れた写真を取り出す。そこには、眠そうな顔をしている俺と、幸せそうに笑う妻の美沙、そしてその間で無邪気に笑う奈美が写っていた。
それは、燃え尽きた我が家の跡地から見つかったデジカメのメモリからなんとか再生してもらったものだ。亡くなる3ヶ月前の娘の幼稚園の入園式の写真だ。
「やっとお前達のところに…」
その時、遠くから車両の音が響いてきた。あの喧しいエンジン音は、間違いなく敵の戦闘車両だ。
目の前のビルの太い支柱には、大量の弾薬が仕込まれている。これが爆発すれば、ビルは崩壊し、敵に被害を与え、道路を塞いで追撃を遅らせることができるはずだ。部下が時間をかけて設置した爆薬だ。間違いない。
俺は右手に握った爆破スイッチを見つめる。
「後はタイミングをミスらなければ…。やっとお前たちのところに行けるな…」
廃墟となった直江津の街に、爆音が響いた。
長い夢を見ていた
それはまだ幼い少年の人生の記憶と言ってもよいものだった
時代は現代ではないようだ。少年の記憶に出ている人物達が皆和風の着物姿で男は髷を結い腰に刀を差している者も居た。テレビや洗濯機、電灯などの家電製品も一切見当たらなかった。
その少年は新次郎という名で、家族や屋敷の者たちから深く愛されていた。勉学に秀で、優しい性格で知られる新次郎だが、身体は弱く、頻繁に体調を崩していた。それでも、両親や兄姉は新次郎を支え、彼の病気を心配しながらも愛情を注いでいた。
しかし、年月が経つにつれ、新次郎の体調は悪化し、7歳の頃にはほとんど起き上がることもできなくなっていた。
聡い新次郎はもう己の命が長くはない事をなんとなく悟っていた。
これは・・・・本当に夢なのだろうか?
まるで俺の頭に新たに新次郎記憶がインストールされているような・・・・
いや俺佐伯遼佑と新次郎2人の魂が融合しつつある?
まさかだな・・・
俺がこの不思議な感覚について考えている間にも新次郎の夢?は進んでいく
新次郎の体調は日が経つに悪化していったが新次郎は家族に心配を掛けない様に努めて明るく振る舞った、が病状は悪くなる一方だった
両親も高名な医者を探しては新次郎を診せたのだが新次郎の病が良くなる事は無かった
そして、彼の最後の記憶は、病状が急変したある晩のことだった。両親が泣きながら医者に縋り、兄と姉が必死に何かを訴えている。その中で新次郎は心の中で、申し訳ない気持ちを抱えながら
最後に「ありがとう…」と呟いた
そう呟きを最後に、新次郎の夢は終わった
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